編集長 鳥越俊太郎
いよいよやって来ましたねぇ、創刊の日が。
私がオ・ヨンホ代表と最初に会ったのが今年の4月7日。で、その後二度お会いして編集長の役を引き受けると決めたのが4月21日ですから、うーむ、まだ4ヶ月と1週間しか経っていないわけですが、来ちゃいましたねぇ、この日が。
昨年10月に直腸がんの手術をしてからもまだ11ヶ月弱。体調も整わないままに大役を引き受けてしまってオーマイニュースのスタッフの皆さんにはご迷惑をかけています。でも、市民記者とスタッフライターとの融合による新しい新聞の試みがこうやって出来上がって行くのを見るのはやはりワクワクドキドキするものですね。
私が予想外だなあと思ったのは市民記者の登録のスピードです。500人とか700人の大台を超えるのが早かったですね。私はもっと控えめに見ていたので皆さんのオーマイニュースに対する思いを改めて思い知った訳です。
この新聞はもう皆さんがご存知の通り、双方向の情報発信が出来るメディアです。これまでのマスコミは、マス・コミュニケーションという言葉とは裏腹に情報の大量伝達ではあっても、大量に意思を疎通(コミュニケーション)させあうメディアではありませんでした。情報を受け取る側はあくまで受け身でしか情報に接するしかないのが実情でした。インターネットの普及はこうしたメディアの状況を革命的に変えました。市民誰もが記者になれる基礎は出来たのです。
オーマイニュースの第一の合い言葉は「市民みんなが記者」です。とはいえ、これまで記事を書いた経験もなく果たして記者活動が出来るのだろうか? 先ずは皆がそう思いますよねぇ。何を書いたらいいのかしら?
確かに新聞記者は少しづつ経験を積んでプロの記者になって行きます。私も記者一年目は何をどう書いていいものやら頭を悩ましていました。書いた原稿をデスクに赤字を入れられる位ならまだいい方で、何度も破り捨てられてクズ籠行きもありました。でも、どうでしょうか、書くという行為は普通の市民なら何らかの形でやっている行為ですよね。
確かに同じ専門家といっても医者が手術をするように市民が手術をするというのはこりゃ、ちょっとありえませんがね。書くのなら別に事実関係がしっかりしていて文意が分かればいいんじゃないでしょうか?
だから、市民みんなが記者というのは成立すると私は思います。皆さんが日々日常生活の中で経験したこと、感じたことをニュースとして寄稿して頂ければいいんだと思います。そのために書く時のきっかけとして私は次のようなキーワードを既に提案しました。
「喜怒哀楽驚恐」
この6文字のうち何か一つあなたの心の琴線に響くものはありませんでしょうか? 「琴線」はどちらかと言うと感動の場合に使いますが、この六文字で一番エネルギーが強いのはやはり「怒り」ですかね。
そう、例えば病院で治療を受けたとき、点滴の針がうまく入らず、何度もぶすぶすと腕に針を刺された。患者はこういう時は黙っているものですけど、本当は「どうなってんだよ!!」と怒りの気持ちが膨れ上がっているんですよね。一人の人が例えばこういう経験談をキチンと書いて頂けると、恐らく市民記者の中で同じような経験をしている人、または医療側で点滴問題で頭を悩ませているナースや研修医の方からも「自分の場合」という原稿が編集部に寄せられるでしょう。そうすれば、これをきっかけに日本の医療の現場で今、点滴の状況はどうなっているのか?編集部の記者があらためて取材して問題を整理してくれます。
このテーマで市民記者からの原稿が量的に質的に深まり、高まればこれで日本の医療最前線の実態を私たちは共有することが出来る訳です。またそこから新たな提案があれば医療の改善に繋がって行くかもしれません。
オーマイニュースの第二の合い言葉は「責任ある参加」です。
日本の文化は一言で言うと「均質な文化」です。国民全員が同じ言語、伝統、習慣、風習を持ち、しかも同じような新聞やテレビを見ている。日本村のような状態ですね。だからここでは実名、顔出しで本音を言う文化よりも匿名文化が発達しました。「本音」と「建前」を使い分ける文化ですね。
これは日本のテレビとアメリカのテレビを比べてみればよく分かりますが、日本ではNHKや民放の報道番組でも事件の証言者が殆ど首なしだったり、モザイクがかかっていたりします。本当は誰が話しているのか分からないのです。これはアメリカのテレビではありえません。日本の番組を参考までにアメリカのABCテレビの友人に送ったことがあるんですが、それは日本の女子高生の援助交際の話だったので全編これモザイクだらけでした。その結果全く使えないということで参考にもなりませんでしたね。
匿名や首なし映像もどこかで事実の確認と言う担保がなされてればまだいいのですが、それさえない場合はそれは公的なメディアの場で使うには問題ある訳ですね。
インターネットの世界は匿名文化が花盛りです。私はそれはそれで、そういうものだというみんなの認識でやっているのならいいんですけど、ニュースや情報という事実関係を大事にする場面では匿名は問題を孕んでいます。私たちオーマイニュースはやはり少々ガマンをしても匿名文化を実名文化にかえるべく努力をする時代になったという認識でやって行きたいと思っています。
言論には言論で、議論には議論で。
小泉首相の靖国参拝に異見を述べただけで加藤紘一議員の自宅が放火されたとみられています。そんな時代に私たちは今、生きています。少なくともオーマイニュースの場では異なる意見がキチンと姿を見せながら戦うところを見たいものです。
異論、反論ドンドン書いて下さい!
そんな活気のあるメディアにしようではありませんか!!