「司法悪用した脅迫」と1100万円求める 13日に第1回口頭弁論
音楽のヒットチャートなどを手がける「オリコン」(東京港区、小池恒社長)がジャーナリストの烏賀陽弘道氏個人を訴えている件で、烏賀陽氏側は8日、同訴訟によって名誉を毀損されたとして、逆にオリコンに対し、1100万円の損害賠償を求める反訴請求を東京地裁で起こした。
この件で、オリコン側が2006年11月17日に起こした訴えは、月刊誌『サイゾー』2006年4月号に掲載された1ページの記事、「ジャニーズは超VIP待遇!? 事務所とオリコンの蜜月関係」のなかに烏賀陽氏が寄せた23行のコメントに対するもの。
「オリコンは予約枚数もカウントに入れている。予約だけ入れておいて後で解約するカラ予約が入っている可能性が高いのです」
などという烏賀陽氏のコメントが、事実無根で、同社のヒットチャートの信頼性を低めたとして、烏賀陽氏個人に対し、5000万円の賠償を求めた。第1回口頭弁論が来週13日、同地裁で予定されている。
烏賀陽氏側は、オリコンの主張は無効と争う構えだが、それに加えて、今回、同社の提訴行為自体を違法として、損害賠償を求めることにした。この件の公判も13日、同時に行われるという。
反訴状で烏賀陽氏側は、
- 烏賀陽氏のコメント自体は同社の社会的評価を低下させるものではなく、名誉毀損に該当するとはいえない
- オリコンは、同誌を出版した出版社「インフォバーン」または編集責任のある編集部・ライターを飛ばして、単に電話取材に応じただけの烏賀陽氏だけを訴えているが、これは同社に都合の悪い発言をする個人を威嚇・攻撃する目的で裁判制度を悪用するもの
――などとしている。
ちなみに、烏賀陽氏が『サイゾー』に寄せたコメントへの謝礼はなかったという。
8日記者会見をした烏賀陽氏は、「裁判というのは、起こされれば応訴するだけで700万円以上かかる。個人が簡単に負担できる額ではない。司法の形を借りた脅迫行為だ」と主張。
烏賀陽氏側の三上理(おさむ)弁護士は、
「これが当たり前になれば、取材に答えた人が訴えられるというリスクを負うことになる。記者は取材する人に『あなたが訴えられることになるかもしれない』と注意しなければならなくなり、取材活動ができず、ものを言えない社会になってしまう。オリコンに対して、こういった違法な訴えは無効であることを示すために提訴した」
と反訴の理由を述べている。
また、反訴に先立って、前日7日夜、日本外国特派員協会で講演した烏賀陽氏側は、今回のように、企業が自社に都合の悪い個人を押さえ込む目的で起こす訴訟は、いわば「いじめ訴訟(SLAPP=Strategic Lawsuit against Public Participation)」だと批判した。
「今回は私のようなフリーだったが、こういった訴訟はどのライターにも起こりうる。それなのに、この件に対する大メディアの反応は非常に鈍く、(腫れ物に触るかのような)センシティブだ。オリコンからのニュースリリースに基づいて、通信社が簡単な記事を書いただけで、直接の取材はほとんどない。しかし、この訴訟がもたらす結果は、メディアにとって非常に重要なものになる」