豊洲の土壌汚染問題、どうなる築地市場移転
東京都が中央卸売市場(築地市場、東京都中央区)の移転先に予定している江東区豊洲の用地で、環境基準の約4万3000倍にあたる高濃度のベンゼンが土壌から検出されたことが、都の調査で明らかになった。地下水からも、一部で環境基準の1万倍というベンゼンが確認された。
かつて東京ガスの工場があった新市場用地は、有害物質で汚染されている。同社が2001年に公表した調査結果では、ベンゼンが環境基準の1500倍、シアン490倍、水銀24倍、ヒ素49倍、鉛9.3倍、六価クロム1.4倍という数字が示されていた。
この汚染された土地を、築地市場の移転先として東京ガスから買い上げた都は、これまで何億もかけて護岸工事や土壌改良工事を行ってきた。
だが、土壌汚染を心配する世論の高まりをうけて、07年4月の都知事選のさなかに、石原都知事が専門家会議を設けることを決定。
設置された同会議が行った粗めの追加調査で環境基準の1000倍のベンゼンが確認されたため、今年2月からは、用地を10メートル四方毎に計4200カ所でボーリングする詳細な調査が行われていた。この詳細調査で、4万3000倍の高濃度汚染が明らかになった。
現在は、詳細調査で挙がってきたデータに専門家会議のメンバーが目を通し、分析している段階で、まだ全結果がまとまっているわけではないという。5月19日の専門家会議で報告される予定だったが、その前にどこからか一部データがメディアに漏れた格好だ。
専門家会議の平田健正座長(和歌山大学システム工学部教授)は、データは手元にないとしながらも、高濃度のベンゼンが検出された土壌は、これまで調査を行っていなかった地点で「非常に限定された1カ所だった」と話す。
一方の、地下水の汚染が確認された場所は、昨年10月に1000倍のベンゼンが検出された付近だったという。
都は、土の入れ替えや盛り土、地下水の浄化といった汚染対策のため、当初予定から1年遅れの2013年に市場の移転・開場を目指している。汚染対策費用として670億円を計上しているが、今回の結果で追加対策が必要になることは必至だ。
食を扱う市場がこれから移転するという土地で、1000倍でも驚くのに、4万倍というケタ違いの汚染。
市場移転に反対する「市場を考える会」の山崎康弘さんは、
「これまで移転の是非に態度を決められなかった人も、(この4万倍の汚染という数字で)考えたようだ。そんな土地に移転なんて、国民が、世間が許さないでしょう」
と語気を強めた。