そして「中立」になれなかった私
3月10日以来続いている中国政府によるチベット弾圧に抗議する集会が3月22日、東京の六本木と中国大使館前で開かれた。オーマイTVはその様子をネットを通じてライブ配信した。以下は、配信しながら私が感じた、とても私的な体験記である。というか、私はどうしても中立的に書けないことを理解していただければ幸いである。
中国大使館前には、政治団体「新風」の主導で集まった100人強の参加者たちが「チベット弾圧をやめろ!」、「シナ人出て行け!」、「福田、池田は退任しろ!」などと主張した。
5人ずつしか中国大使館正門前にいけないとの警察の説明を受け、軽いもみ合いが起きる場面も見られたが、大きなトラブルはなく、殆どの参加者がそれぞれ用意した抗議文を大使館のポストに投函した。
40代の参加者が「僕は右翼だけどね(笑)。しかし、あんな酷い国(中国)にさ、政治家のだれも文句いわねえ。おかしくないのか? 5月に福田さんチベット問題言えると思うの? 多分絶対ないね」と首を左右に振る。
午後2時、中国大使館前から1キロほど離れた六本木(東京・六本木)の三河台公園に移動した。三河台公園には、すでに在日チベット人10人余りと支援する日本人及び外国人500人ほどが集まっている。主催は、チベット・サポート・ネットワーク・ジャパン(TSNJ)だ。
「FREE TIBET!」「チベットに自由を!」を叫ぶ彼らの表情からどれほどチベットが厳しい状況に置かれているか分かる。
参加者の日本人は「ネットでこの集会があることがわかった。実際参加してみて彼らの肉声を聞くと、本当になんともいえない気分になってしまう」と話した。TSNJは、以前からネットを通じて参加を呼び掛けてきた。
オーマイTVチームが到着してすぐ、デモ隊は六本木の街に出た。在日チベット人が先頭に立って「チベットに自由を!」を叫ぶ。
申し訳ないが、真正面から彼らを撮っていた私も胸が熱くなり、何故か鳥肌が立った。記録者は中立的でなければいけない神話が、この時にぶち壊された。
また最初は500人程度に見えた行列が時間の経過につれて増えていく。警視庁発表は約900人だそうだが、私が目算で数えてみると、どうみても1000人は軽く超えている。
途中で参加した人、行進を見ていた一般人が飛び入りで参加する姿も見えた。日本で数々のデモを見てきた私だが、 このような経験は始めてた。いつも神経質的だった警察もなぜか穏やかな感じがした。
事務所に帰ってきてライブ配信した映像と、その後撮った参加者たちのインタビュー映像(撮影:橋爪明日香)をみた。先頭で叫んでいたチベット人のドルマさん(33、女性)がたどたどしい日本語で「中国人はいやではないです。そのシステムが…。流れている映像を見ると本当に心が痛みます。いち早くチベットを解放してほしい」と答えている。
そういえば、彼らが行進中に叫んだ主な言葉は「FREE TIBET」と「チベットに自由を!」だった。中国を罵倒するようなコールがあまり聞こえてこなかったのは偶然だろうか。21日、オーマイTVが取材したダライ・ラマ法王日本代表部事務所のルントックさんも中国政府が外交・防衛に全権を持つことには、なんら異見もなかった。
今行われているチベット弾圧をやめて「チベットを自由にしてほしい」だけである。たくさんの中国専門家たちやマスコミが「相好理解と対話」を言及しているが、総人口600万人の中120万人を殺されたチベット側に、今も殺し続けている中国政府との「相好理解・対話に出よう!」と求めるのはあまりにも残忍ではないか。
3月22日、東京で行われた集会の様子を動画で配信した。ぜひご覧いただきたい。