復刻ヤッターマンからガシャポン、コンビニくじまで
傑作アニメ「ヤッターマン」(日本テレビ、読売テレビ系)が30年ぶりにテレビに帰ってきたかと思えば、今春には誕生40周年を記念した「ルパン三世」のOVAがリリースされる。中年向けの「アニメ商売」が盛んだ。
コンビニエンスストアの店頭では「機動戦士ガンダム」や「キン肉マン」などのアニメキャラクター商品の「くじ」が人気だ。上位を引き当てるともらえる賞品には、パソコン用品の「USBハブ」や「MP3プレーヤー(モビルスーツザクの頭型)」「目の疲れをいやすアイスパック(シャアのアイマスク型)」などがある。子どもが使うわけがない商品、あきらかに大人向けアイテムだ。
「おとな天国」のはずの東京、大手町の地下鉄通路にも中年向けにガシャポンが並んでいる。文字通り、おとな買い(経済力にものを言わせるまとめ買い)をしていくスーツ姿のビジネスマンたちが後を絶たない。
前出の「機動戦士ガンダム」や「ドラゴンボールZ」、「仮面ライダー」、「ウルトラマン」などを賞品にしたコンビニエンスストアの500円くじ、「一番くじ」をリリースしているバンプレストの広報に聞いた。
「取り上げるキャラクターによって違いはありますが、『大人から子どもまで』というよりは、30代、40代の人たちをターゲットにした商品と言えます。どうしても世代別人口が多い世代ですので、自然にそうなっていますね……」
この500円でひけるくじは、メーカーも予想をはるかに超える売れ行きだとか。具体的な数字は出せないとしながらも「どんなキャラクターのくじでも1カ月も待たずに完売する」という。
このコンビニエンスストアのくじに夢中になっている夫をもつ主婦に聞いた。
「一度に10回もくじをひくから5000円。それを3日と空けずに買ってくるので経済的に大打撃。居酒屋に寄り道してもここまでは高くないでしょ。それに食事の用意をしなくていい分だけ歓迎できるけど、おもちゃは狭い家に持ち帰るだけでも大迷惑!!」と、かなりご立腹。
「だいたい30歳を過ぎて、子どもまでいるのに、寝てもさめてもガンダム、ガンダムってどうなの?」と、この主婦は夫を大きな子どもとしか見ていないという。いつまでたってもガキ……ということなのだろうか?
子ども時代に夢中になったアニメを現在も追っかける大人たちの事情に詳しい、元アニメ専門学校講師のマンガ家は、これを真っ向から否定する。
「おとなの『子ども回帰』なんてとんでもない。逆に今の30代は、ひと世代上の人たちよりも早く『心が老化』しているんですよ」
老化の1つは「新しいアニメ」を開拓するのではなく、あくでも懐古趣味であることにも現れているという。ヤッターマンのテーマソングがイメージに合わないという苦情が殺到している事件も、懐かしい思い出を傷つけられているから気に入らないのだと分析する。
「今の50~60代が映画『三丁目の夕日』を支持してヒットする現象がありました。50~60代の人は、この作品に描かれている『良かった昔』を思い出すことで、折れた心をなぐさめているのだと思います。翻って、30~40代で心が折れている人は、ガンダムやヤッターマンなりを見て『昔を思い出すセラピー』をしているのです」
そう言われてみれば「昔は良かった」というのは、典型的な年寄りのセリフだった。