あの日、一体何が起こったのか
まず、読者の皆さんに、2007年、富士スピードウェイ(FSW)で開催された「F1日本GP」で起きた出来事からご説明しなければならない。
9月30日、一部の新聞に、このような見出しが躍った。
- 「F1日本GP予選、雨で道路が陥没 2万人の観客がバス待ちに2時間足止め」
- 「レースが見えない! 7000人の観客に3億5000万円の払い戻し」
- 「バス渋滞でレースに間に合わない観客85名、チケット代ほか、掛かった経費分全額返金」
どれだけの方がこの災害に気付かれたのでしょう。バス渋滞の問題の発端は、雨による道路の陥没ではない。ずさんな運営管理計画、管理体制にあった。
「偽りのない真実の報道をしてほしい」
富士スピードウェイを訪れた多くの観客たちは声をそろえたようにそう叫び続けている。
観客たちが叫び続ける真実とは……。
「道路の陥没は晴天だった28日から起きていた。その状況をFSW側は、28日の午後に確認していたが、何の対応もしないまま翌日を迎えた。その後、雨が降り、問題が顕在化した」
そう証言する関係者もいた。
7000人から、コースが見えないと苦情が殺到したC指定席も、FSW側の公式発表によると「仮設席工事が大幅に遅れ、問題の指定席だけ完成確認が出できなかった」とのこと。C指定席料金6万1000円のうち、自由席程度の価値しかないとして、すぐに5万円の払い戻しが発表された。
しかし、C席仮設部分はF1開催が開催される約1カ月前には大半の工事が完成しており、8月25日、26日に同所で開催されたFormula-Nipponの際には、その指定席の一部(常設部分)は一般客に解放されていた。
完成確認ができないほど、直前に出来上がったものではないとも言われており、事実、8月25日に観客の1人が撮影した写真がホームページ(HP)等で紹介されたりもしていた。
その撮影者は、記者の友人だった。「なぜ、あの座席の写真を撮っていたのか」と聞いてみたところ、「明らかに座席の前半分と後ろ半分の傾斜角度が違う。あんな状況では絶対にコースが見えないと思って撮影しておいた」と言う。
この観客は、このような架設工事にくわしい方ではない。だからこそ、仮設席設計者をはじめ、工事関係者やFSW側の仮設席責任者は何をやっていたんだという話になるわけだ。
しかも、このC指定席は、「レース通なら必ずここで見たい」と思うであろう、FSWで、もっとも見ごたえのある席。この席を苦労して確保し、遠方からはるばるやって来た観客たちは、「5万円の払い戻しをされてもうれしくない」と叫ぶ。
ところで、レースのメインスポンサーであったフジテレビの笠井アナウンサーの身内が問題のC席に座っていたとのことで、10月1日、「特ダネ」のなかで、こう言っていた。
「見えない席だったのですが、ビックリしたのはその席の観客に対して5万円も返金されるということです」
何にも苦労をしていない笠井アナにしてみれば「5万円も」かもしれない。しかし、苦労して6万1000円のチケットを確保し、現地へ出掛けたファンにしてみれば、「5万円の返金」なんかでは納得できないのだ。
レースになじみがない一般の方々のなかには、「トラブルがあっても即座に5万円、総額3億5000万円を返金するとは、さすが世界のトヨタをバックに持つ富士スピードウェイだ」と思う方もいるかもしれないが……。
次回は、「バス待ちの地獄絵図」について検証していこうと思います。
(つづく)