無投票=自民党への投票だ
前回の参院選で20代、30代の投票率は30%台と、全世代で最も低く、政治に対する無関心ぶりを表していますが、実は、選挙に行かないことで、最も損をしているのはこの20代、30代です。
こうした無投票層は、これまで、好むと好まざるとにかかわらず自民党に「半票」程度を投票しているのと等しい効果を果たし、自民党の強力な支持基盤として存在してきました。
私が自民党の強さを一番感じるときというのは、自民党の圧勝ぶりよりも、むしろ、この投票率の低さを見たときです。自民党に投票している人々は、投票率に得票率をかけて得られる絶対支持率を見てみると、多めに見積もっても、せいぜい70%×50%=35%でしかありません。
ひっくり返して言えば、有権者の65%が支持していないということです。それにもかかわらず、戦後50年以上もほぼ一貫して政権交代が起こらずに、長期政権を維持してきたキーが、この無投票層の存在です。
特に最も投票率の低い世代である20代、30代の無投票が鍵を握っています。その多くは、どうせ誰に入れても変わらないという無関心な気持ちや、今の政治全体が気にくわない、といった弱いネガティブな意思の表れですが、ここに選挙制度のトリックが仕掛けられています。
無投票という行動の動機となった本人の意思とは裏腹に、これまで無投票は、実質的には半票の自民党支持票としてカウントされ、その結果、政権が維持されてきました。
無投票は、どの候補者に投票しているわけでもないので、積極的な加算効果ではありません。しかし、現実的には可能性ゼロである有権者全員が無投票という場合を除いて、無投票は、各候補者、政党の得票割合に応じた投票と同じ「消極な加算効果(機械的加算効果)」を持ちます。
この加算効果を最小限に抑えるには、得票率に応じて当選議員数を減じるしかありませんが、現行の制度はそのような仕組みにはなっていませんので、事実上、無投票は、投票しているのと一緒になります。
これは、例えば、比例区で各党の割合が、自民5:民主3:公明1:共産1ならば、無投票は、この割合で各党に投票したのと同じになり、自民党に半票を投じているのと等しいことになります。
これだけなら、野党にも半票入っていることになりますが、小選挙区や一人区の場合であれば、多くの選挙区で自民党にほぼ1票投票しているのと同じになるので、全体としては半票を自民党のみに投じた程度の議席配分となります。
無投票は与党の強い味方
今回の選挙は野党優位と報道されていますが、図式は基本的には変わりません。それは、先日の毎日新聞で「結果を左右する投票率に関心 政局にも影響」という記事にも明らかです。同記事には、今回の参院選について、自民党の閣僚関係者が、投票率が「60%を超えたら惨敗だ」と述べており、公明党選対幹部も「夏休みで投票率が伸びなければ、与野党互角の10カ所程度の1人区で全勝も可能だ」、「期日前投票の増加も、必ず投票する人が前倒ししただけ。最終的には50%前半に止まる」と、希望的観測として述べているのも、その証左といえます。選挙のプロたちは、「本当の味方」が誰であるか、よく心得ています。
無投票というのは、自民党が仕切る日本政治の堕落ぶりに背を向けた、潜在的不満層の票を自民党への支持票に変換するシステムであり、このシステムの構築こそが、支配勢力の総力を結集した最大の裏国家プロジェクトだったといっても過言ではありません。
もともと自民党は基本的には富裕層の利益を追求する党であり、所得でいえば、1000万円以上、資産でいえば、1億以上の富裕層全体を支持勢力としています。
政策面から見ると、年金や税金などで20、30代の、特に都市部の中・低所得層は明らかに損を被っており、実は最大の反自民党勢力になるはずなのですが、実態は、その意思とは裏腹に、選挙に行かないことで自民党の最有力の支持層となっています。「国民は現在の政治に不満があるのに、政権交代は起こらない」という状況が常態化しているのはこのためです。
多大な損を被っている20、30代が、今後、損をしないために、まず、20、30代が投票所に行き「自分たちの利害に配慮しないと、どこの政党も勝てない」ということを、見せつける必要があります。
そして、その後も選挙のたびに投票所に行き、前回投票した党や議員に不満があれば、落選させるため、今度は対立候補に入れるのです。前回の党や議員にしてみれば、マイナス2票の効果が生じるのでこれは脅威です。
これは海外ではスイング・ボートと呼ばれる行為ですが、こうして投票を通じ、政治に自分たちの声を反映させていくことが大切です。無投票層は、政治で主動権を握り、自分たちの声を反映させる力を持っています。
それを生かすためには、まずそのことを自覚し、投票に行くほかはありません。そして、一度だけ行って終わるのではなく、その後も投票を続けることで、存在感が増し、政治を動かしていけるようになります。
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